臨床研究の推進

ALARAの法則と医療被ばく防護体系

ALARAの法則と医療被ばく防護体系

1977年に国際放射線防護委員会(ICRP)は、放射線防護の基本的な考としてALARA(As Low As Reasonably Achievable)の原則を勧告しています。
この原則は、「放射線の利用に際してはメリットがリスクを上回る場合には線量限度無しに利用可能であるが、社会的・経済的な要因を考慮し、放射線による被ばくは“合理的達成可能な限り低く保しなさい!”」と言うものです。すなわち、この放射線防御体系の基本として、以下の3原則が勧告されています。

❶ 行為の正当化;被ばくを伴う可能性のあるいかなる行為も、被ばくする個人又は社会に対して十分な正味の利益が得られるものでなければ行ってはならない。
❷ 防護の最適化;正当な行動の結果もたらされる全ての被ばくは、個人線量の大きさ、被ばくする人の数、及び受ける可能性のある被ばくの全てを、経済的及び社会的要因を考慮に加えた上で、合理的に達成可能な限り低く保たなければならない。―ALARAの法則―
❸ 個人被ばく線量限度;上記❶及び❷の法則によって決まる線量は、ICRPが各々の状況対して勧告する個人に対する線量限度を決して超えてはならない。

しかしながら、❸には適用外事例があり、例えば原発事故での緊急時や医療での個人の診断や放射線治療などでの被ばくです。個人の医療被ばくは、診断や治療という明確な目的のために意図的に行われるものであり、線量限度を適用した場合には患者に必要な検査や治療を受けられなくなることで、健康上の利益が損なう可能性があるためです。

なお、医療被ばくにおいても放射線の利用が患者にとって害よりも多くの利益をもたらすこと(正当化)や、線量を最適化することが求められるのは当然のことです。また、具体的な被ばく線量限度は定められていないとは言え、線量の国際的な目安として、1年間に健康に影響を与える可能性のある放射線量は100 mSvとされています。さらに、吐き気などの症状が出るのは、全身に1.0 Sv以上の放射線を短期間で受けた場合とされています。